「さめのたれ」の由来と地元の呼び名
「さめのたれ」の語源は確かではありませんが一説では、この「たれ」の名は写真のようにヒラヒラと垂らして干したことから、干している時の垂れ下がった姿が由来と伝えられています。また地元の人は 「さめんたれ」と呼ぶこともあります。
さめのたれの歴史
鮫は古名(こめい)を「鰐(わに)」とも言い、「古事記」などの神話にも登場するなど、神代の時代から日本人にとって身近な存在でした。鮫の干物「さめのたれ」には、古代そのままの「塩干し」と、大正時代からの「味醂干し」とがあり、昔からごく日常的な伊勢地方の郷土食でした。
全国的にはサメを食べるのは珍しく、鮫の干物が伊勢神宮に神饌(しんせん)として供えられることから、この地方に広まったのではないかと伝えられています。神宮では今日でも神饌として供えられているだけでなく、古くには朝廷への貢納物として、皇室また伊勢・斎王様の御膳にも進められた御料でした。
神饌(しんせん)とは?
神饌(しんせん)とは、日本の神社や神棚に供える供物の事で、御饌(みけ)あるいは御贄(みにえ)とも言います。神饌には、調理して供える熟饌(じゅくせん)と、生のまま供える生饌(せいせん)とがあります。
熟饌の調理には、本来は火打ち石などで起こした神聖な炎(忌火・いみび)のみを使います。神社などでは、ご飯、塩、水、鯛、鰹節(干鰹)、海藻、果物、清酒などを供えます。基本的には土器を器にするのですが、地域によっては鮑の貝殻を代用する場合もあるそうです。本来、朝夕の2回供えるのですが、これも地域によって異なっています。神社などでは、御饌殿(みけでん)で行うことが多い。
祭儀の後に供えた神饌を食べる宴のことを直会(なおらい)という。直会には、神の供物を食べることで神に近づくという意味もあるが、人が食べることのできないものは供えてはいなかったという証明でもある。ただ、厳密に言うならば、献饌された神饌が必ず直会にあがるという訳ではない。献饌し終わった神饌を神体山へ投げるなどの行為が今現在でも一部見られるため、各々神饌に対しての礼儀作法、考え方が異なっていたこと、それらが今でも継承されてきたことが伺えます。
さめのたれのができるまで
さめのたれに使うサメは地元でイラギと呼ばれるアオザメ、山椒魚のようなドチザメ、尾が長いヨシキリザメ、金槌のような頭のシュモクザメなどがあります。
サメは普通の魚とは違い、小骨がなく軟骨だけなので比較的さばきやすい魚です。先ずは頭を落とし、はらわたを取り出します。その時にサメ特有の匂いが広がります。
サメは肉の中に尿素が多量に含まれており、これが化学反応を起こしてアンモニア臭になるのです。この臭みを防ぐのはとにかく手早くさばくことが大切なのです。(工場長談)
手際よく切り分けた身をよく水洗いし、味醂と醤油、砂糖を合わせて作った特性のタレに漬け込みます。程よい飴色になってきたら一切れづつセイロに並べ風で乾燥させます。最後は天日に干して仕上げます。
さめのたれに使われる鮫の種類
ヨシキリザメ | 体長は約2~3m。背は青色、腹は白色で、ほっそりとしたスマートな体型で目が大きいのが特徴です。世界中の海に生息しており、かまぼこや中華料理の高級食材であるフカヒレの原料になることでも知られています。 |
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アオザメ | 体長約1.8~2.5m。名前の様に体が青色、腹は白色で、速く泳ぐために進化した美しい体つきです。世界中の海に分布しています。歯は鋭く、時速70kmで泳ぐことが出来るといわれています。 |
ドチザメ | 体長約1.5m。日本の温帯の磯では普通に見られるが、漁業の対象種ではなく刺し網や定置網で混獲される程度。体が比較的丈夫なことと、あまり動き回らないこと、また性格がおとなしいことから多くの水族館で飼育されています。 |
シュモクザメ | 体長約3~4m。頭部が左右に張り出してその先端に目と鼻孔があり、顔が鐘を打ち鳴らすT字の仏具撞木(しゅもく)のような形をしていることから撞木鮫、英語ではハンマー(金槌)のヘッド(頭)に見立ててハンマーヘッドシャークと呼ばれています。 |